白黒的絡繰機譚

リアリストロマンチスト

「ずっと一緒にいましょうね」

そんなくだらない台詞を、ネプチューンは素面でよく言う。こういうのを、人間はロマンチストとか言うんだっけ。
でも、ロマンチストなら相手と場所を選ぶべきだと思う。俺なんかを相手に、いつもどおりの海辺で言うことじゃない。……いや、海ってロマンチックなのかな。確か人間はそうだった気もする。

「ずっとは無理だろ……」

俺はロマンチストじゃないので、こうしてすぐ否定してしまう。良くないよな、とは思うんだけど、他人と喋るのが下手すぎて、よくやってしまう。普通気を悪くするだろうに、ネプチューンはそうは見えない。見えないように振る舞ってるだけかもしれないけど。

「確かに少し難しいかもしれませんねえ。貴方は宇宙空間に対応した作りではないですし」
「うん……?」

ずっと一緒に(地球に)いる、じゃないのか。確かにコイツは宇宙産だけど。

「今の貴方の身体、好きなんですけどねえ。素材だけ対応させれば良いというわけにもいきませんし」

そろ、とネプチューンが俺の手を取って撫でる。最初の頃はこれの度に酷いことばかりした。やっぱりロマンチックとは程遠い。

「この星の電子頭脳の耐久もちょっとよく分かってないんですよね。貴方達DWNって結構オーパーツなので、そこらじゃ参考にならなくて」
「……」
「コピーしたら済む……という問題でもないですからねえ。私はここにいる貴方が好きなわけで……」
「えーと、ネプチューン……あんまり聞きたくないけど、詳細聞いていいか?」

勿論です、という返事をする顔も、いつもと特に変わりなく。なんだっけ、言葉が通じてるのに通じてないのも宇宙人、なんて例えるんだっけ。例えなくてもコイツは宇宙人だけど。

「私達、地球の侵略に失敗したのに留まっているのは、サンゴッド様の修復を待っているからなんですよね。ですから、それが終わればまた地球を侵略するか、他の星に移動するかしなくちゃいけない。でも私は、貴方とずっと――永遠に一緒にいたいので。色々考えてはいるんですけど、最悪コアだけ来ていただいて、身体はまた後で……みたいになるかなあと」
「……そう」

俺は、かなり誤解していたらしい。こんなロマンチストがいてたまるか。
将来の話ってだけなら、永遠に一緒にいたいってだけならロマンチストだ。でも、コイツは現実的にその方法をはっきりしっかり構築してる。下手したらその宇宙対応の俺のボディの設計図だってデータがあったりするんじゃないだろうか。
それを、こんな風に事も無げに言いやがって。

「頑張りますから、ずっと一緒にいましょうね、ウェーブ」
「……いられるもんならな」

……まあ、別にさ、一緒にいたくないわけじゃないんだ。言ってなんかやらないけどさ。
でも、少しはロマンのある提案にして欲しい。