n回目の二人において
「ダストマン」「何」
「……いや、何でもない」
このやり取りは何度目だったっけ。カウントしてないからわからない。でも、呆れる程度には繰り返した。どうして、繰り返すんだろう。
刺さるような角度の視線を浴びながら、ぼくはただただゴミの山を歩いて、探して、分けてを繰り返す。ぼくたちの日常は、繰り返ししかない。集めて、見送って、壊して、小さくして、さようなら。それを繰り返すから、ここにはぼくたちしかいない。繰り返す度に摩耗する何かに、耐えられるものは少ないから。
それなのに、だ。
「ダストマン」
また、繰り返す。君はきっと、ぼくより話すのが上手な筈なのにね。
「何」
ぼくもまた。振り返りもせずに、たった一言呟いて。一瞬考えて、
「何、ジャンクマン」
初めて、繰り返さずに君のことを呼んだ。背後から大きな音がする。いやいやまさかと思いつつ振り向くと、ぼくと君の間には鉄くずが積み重なっていた。取り落したんだろう。
「そんなに驚くこと?」
「……オマエは、オレの名前も覚えてないのだろうと思っていた」
「そこまでメモリは逼迫してないよ」
「しかしその……興味がない、のだろうと」
そうだったのかもしれない。繰り返すことだけを繰り返して。今の状況は、エラーみたいなものだ。
変化なんて多くない日常だ。そこに君が突然現れて馴染んでしまったのはいつからだったっけ。
「どうかな、わからないな。ただ、繰り返しすぎて疲れたのかも」
「それでもいい」
ジャンクマンが大きな身を歪に屈めてぼくを見る。
でこぼこのカメラアイが、ぼくだけを見ている。ずっとそうだったんだろう。君は、何故かぼくだけを見ていた。
「オマエが振り返るなら、言おうと思っていた」
「何を?」
「……分かっているんじゃないか?」
うん。うまく排出しきれてない熱が分かるほど近いから、続く言葉なんてお見通しだ。
……それでも、ぼくは君の言葉を待つ。
「オレは、」
繰り返し繰り返し。そんな日常をきっと今日までだ。
明日からはきっと、変わらないけど全く違う日々が待っているのさ。……なんてね。