白黒的絡繰機譚

人工甘味料味

「それ、意味あるのか」

業務と業務の間、所謂休憩時間のことだった。俺がE缶に口をつけるのを、ガキみたいに見つめていたジュピターがそう呟いた。

「意味もなくエネルギー補給するわけないだろ」
「いや、エネルギー補給は分かるんだが……なんで経口摂取なんだ?」

今更コイツは何を言っているのだろう。そう思ったが、よくよく思い返してみると、コイツがE缶を啜っているところを見たことがない。

「所謂人間味を持たせたかったんだろうよ。……お前はいつもどうしてるんだ」
「俺達は今だと熱や光なんかでどうにかしてるな」

成程、外宇宙製はそうなっているのか。確かに内部でエネルギーを生成出来ないと、不便極まりないのだろう。惑星間移動中に燃料切れで立ち往生したら永遠に復帰出来まい。
言い方からすると、生成方法も多数あるらしい。ほんとオーパーツだなお前ら。

「なんとも便利なこって」
「それでも生成が追いつかない時は外部から補給するぞ。経口摂取はしねえけど」
「出来ないのか?」
「出来るが……習慣がない? とでも言うか」

人間や生物のような見た目と能力を与えておいて、三大欲求の満たし方は同じじゃない。
歪なロボットだなと思った。ま、あっちからすればこっちがそうなんだろうが。わざわざ人間なんかと同じにする意味がわからない、とかなんとか。

「お前のとこの隊長は、こういうやり方嫌いそうだしな。……だがジュピター、お前は気になるんだろ」

残り半分ほどになったE缶をこれ見よがしに振る。

「まあ、少しは」
「分けてやってもいいぞ」

え、とジュピターが目を見開く。なんだか心外だ。俺だって偶にはそういう気になることもある。

「半分か、一口か。……好きな方を、な」

無意味だと思う。経口摂取のエネルギーも、この択も。だが、無意味が大好きな人間が作ったロボットだから仕方ない。
お前も、この星にいる限りは無意味をエネルギーにしていかなきゃいけないんだ。ま、嫌いじゃないだろう?

「……一口で」

よくできました。ならしっかり一口分、大事に飲み干して舐め上げていけよ。