白黒的絡繰機譚

インベーダーインベーダー

ジュピター×ジャイロ要素を含みます。

「貴方が喜ぶと思って」

アイツは、ネプチューンは、そう言って俺に色々なものをくれた。言葉や、態度や、それ以外にも沢山。だから偶には俺から、と思うのは自然なこと、の筈だった。

「貴方はそんなこと考えなくて良いんですよ」

いつものように、人のいない海辺で。初めて俺が言った提案に、いつもみたいに優しい声でそう返されて、俺はすぐさま海底に銛を撃ち込んだ。

「大丈夫ですか?」

もう一発撃ち込んだ。誰のせいだと思ってるんだ。普段察しが良いくせに、何もわかりませんみたいな態度が頭にくる。
俺の言ったことはそんなにおかしなことだっただろうか?……いいやそんな筈はない。俺らしくはないかもしれないけれど、真っ当な、普通の感情の筈だ。

「……もういい。二度と言わない」

わざわざ二言目を付け加えた俺は、やっぱり何か期待をしていたんだろう。望むものをくれると、そう思って。

「そうしていただけると助かります」
「は?」
「申し訳ありません言葉足らずでした。……説明しますから、右手は降ろしていただけると」

仕方がないので右手を降ろして、続きを待つ。
いつも通りの顔をした、ネプチューンがそこにいる。

「貴方は、いえ貴方がたは少し失念しているようですが、私達SRNは侵略者(インベーダー)です」

そんなことは最初から知ってる。確かにジャイロのとこの見てると、俺たちDWNより人間臭いんじゃないかと思うけど。それがどうしたかと少し首を傾けると、やっぱりいつものように笑った。

「なので、どんなにこの星に馴染もうとも、本質的には壊してしまいたいんです。好きなら、尚更。でも、それは私の価値観で、貴方は違うでしょう? だから私は貴方に与えるけど、与えてもらわなくて良いんです。無くなってしまうから」
「そうは見えないけど」
「見えないようにするのが、入り込むコツなんですよ」
「演技ってことか?」
「別に全く嬉しくないわけじゃないんですよ。先程の貴方の提案だって、とても嬉しかった。けれど、私の望むもので貴方がまだ与えてくれていないものは、破壊しかない。だからお断りした。それだけです」

……ネプチューンは、いつだってそういう事を言う。
歯の浮くような、と表現するんだっけこういうのは。浮くと言うか、溶かすようなことを飽きることなく俺の耳に流し込んでくる。
これだけ溶かしておいて、まだ俺を壊したいのか。欲張りな侵略者(インベーダー)め。

「ジャイロのとこのもそんなこと考えてるのか……」
「どうでしょうねえ。忘れているのかもしれませんし……、実は毎日衝動をねじ伏せているのかもしれませんね」
「……難儀だな、侵略者(インベーダー)も」
「でも、これも良いものですよ。一方の100より、合わせて150の方が幸せだ」

間の手を握られる。握り返す。いつものことだ。
……いつか俺が壊されることを幸福と捉えたら、コイツは一体どんな顔で俺を殺すんだろう。理解できないけれど、それだけは見てみたいと思った。