教えればどうなるか、なんて















私の日常の大半は、退屈で出来ている
退屈なんて、つまらない
つまらないなんて、意味がない
意味がないのは、価値がない
だから私は今日もそれを解消してくれるであろうもので遊ぶ


「……なんだ。何か用か?」


「いいえ、別に。ただ警部はとても分かり易い方だと思っただけですよ」


「な……っ!」


顔の大半が隠されて、目元しか分からないのはお互い様
それなのにこの人はなんて分かり易いのだろう
無駄にクルクルと変わる瞳は、暇つぶしに丁度良い

とてもとても、私を苛立たせるけれども


「今日も凶悪事件が起きなかった、とか。好きなドーナツを今日も買えた、とか。どれもすぐ顔に出てますよ」


どれにも、気がつかない
人で言うならば、無意識の行動
ロボットがそんな事をする?馬鹿馬鹿しい

けれど、だから私は貴方で遊ぶ
貴方の表情を操るのが、楽しくて仕方ない


「そんなにか……職種的にマズいな」


「まぁ、分かるのは警部に慣れた方だけだと思いますよ。例えば……ああ、あの白い方とか」


「……スカルか。お前の言う事が正しいのなら、スカルに限らずウチの全員にバレているんだろうな……」


不自然な間
白、と言われて思い浮かべる姿なぞ一つしかないでしょう?
貴方のおめでたい思考と無意識は、それしか導き出せないでしょう?


「多分そうでしょうね……ああ、もしかしたら白い方だけ分からない事もあるかもしれませんね」


そしてそれと同時に、貴方も分からない事が
見ている側としてはとても滑稽ですよ?


「……何が言いたい」


「警部こそ何が仰りたいんですか?」


聞かずとも分かるけれども、敢えて聞く方が面白いでしょう?
声が震えているのすら私の予想通り
職種通り、型にはまったのがお好きですか?


「…………」


焦り、困惑、不安
現れては消えて、消えては現れる


「どうかしました?警部」


貴方はきっと思う
『何がどうかしました、だ。お前の所為だろうが』
それは間違いだと気がつきませんか?
全ては、貴方自身の所為
ロボットの癖に、そんな考えを持つ貴方が悪い
そんな面白いモノが近くにあって、遊ばないのは失礼でしょう?


「…………」


無言
早足、けれどおぼつかない歩調


「……お礼くらい言っても、罰は当たりませんよ?警部」


こんなにも遊んであげてるのに








私は退屈なんです
だから、貴方の表情が変わる事をしたい
それが今、一番の暇つぶし
ねぇ、警部?これで明日には面白い位沈んだ顔を見せてくれますか?
それとも、くっしゃくしゃに歪んだ顔をしてくれますか?
はたまた、どちらも通り越して無表情ですかね?








……ああ、今日もとても退屈な一日だった