つまりは、落ちるという事
そして、引き込むという事















「――ほう、よく此処まで辿り着いたな。ようこそ、ロックマン」


目の前には青い少年
家庭用ロボットとして生まれ、平和の為に自ら戦闘用となったとても――哀れな少年だ


「…………」


「そんなに身構えなくとも良いだろう?……ああ、そうだ。俺の名はメタルマン、DWN009、メタルマンだ」


「メタル、マン……」


噛み締める様に俺の名を呼ぶ
その表情はここに訪れた時と変わらず、固いままだ


「メモリーに刻んでおくと良い。誰に倒されたか、というデータはお前の生みの親の役に立つかもしれないからな?」


少年は動かない
強固な意志、というやつがそうさせているのだろうか
ああ――


「動かないのならば、こちらから始めさせてもらおうか?あまり時間を掛けるのは、俺の趣味じゃない」


哀れだ
とてもとても、哀れだ
強固な意志を秘めた瞳は真っ直ぐに俺を見つめるが、それと同時に戸惑いと悲しみで揺らめいている
それはとても、不快だ
この戦いの場に何を持ちこむ?
感情なぞ要らない
お前と俺が果たす事は一つ、互いの動力炉を止めようと傷つけあう事だけだ
その為に改造されたのだろう?
戦闘用である限り、何も持つべきではないのだ
お前が純粋に、ただの家庭用であった時のものなぞ何もこの場には必要ない
それがある限り、お前は俺に切り刻まれるしかないという事が分からないのか?


……ああ、時間が勿体無い


「……!!」


先ずは、一枚
結果は掠めただけ


「少しはやる気になったか?抵抗されるのも時間が掛かるが、張り合いがないのはつまらないからな」


マスクの下で笑った事に気がついたか、眉を少しひそめるとやっとのことで武器を構える
それでこそ、倒し甲斐がある
そうでなければ、俺が弱い者虐めをしているみたいだろう?
















「…………」


「…………」


「…………」


「……どうした」


「…………」


「研究所に連れて帰れない相手は撃てないか?修理できないのなら止めが刺せないか?」


「…………」


「そう思っているのなら、俺に首を差し出すのが賢明だが」


「右手が無くとも、左手がある。左手が無くとも、口がある。俺がお前を切り裂く手段はまだ大量にある」


「どうだ?まだ躊躇うか?」


「…………」


「…………躊躇うよ」


「ならば、俺の勝ちだ」


千切れそうな左手を動かして、力の入らない足を動かして
何故そこまでするか?決まっているだろう
俺には、これしかする事がない








「死んでくれ、ロックマン」








……そう口にした数秒後、俺の記憶は一時的に途切れる
次の記憶が始まるのは、全てが終わった後
あの時、ロックマンの首に突き立てる事が出来たのかは、定かではない
届かなかったのかもしれないし、届いたが浅かったのかもしれない
今となってはどうでも良い事だ
それどころか、知らなくて良かったと思えている
だからこそ今の俺があり、この気持ちがあるのだから
けれど、だからこそ、辛いものも、ある








それを押し付けるかのように俺のコアを残したお前が悪いんだ、と思ってしまうのはおかしいのだろうか