ああ、不甲斐ない!!








一文字目すら出てこない








「…………」


「…………」


「…………」


「…………シャドー」


「…………ジェ、ジェミニ、その、拙者は」


口が回らない
伝えたいことの片鱗すら言葉に出来ない
己がこの場を作ったというのに、何と不甲斐ないのだろう


「拙者は?」


「そ……その……」


覚悟は決めた
とっくの昔に腹は括った
そのはずなのに、出てこない

言いたいのだ
全てを吐き出して楽になってしまいたい
その結果がどうなろうと構わない
ただ、この想いを、言葉を内に秘めていくことに疲れてしまった
彼を見ることしか出来ない己に我慢が出来なくなった
だから、言おうと決めたのに


「どうした?」


この場になって、まだ迷っている
きっと己の中に存在する、浅はかな葛藤が口を動かせなくしているのだろう
口にしてしまえば、拒絶されてしまえば、もう見る事すら叶わなくなる……それならば、と


「いや、別に……」


訝しそうに見つめられる
早く、早く言わなければ
焦れば焦るほどに、口が動かない
伝えたいと思うほどに、言葉が溢れてくるというのに、どれも用途を果たそうとしない


「なあ、シャドー」


「な、なんでござろうか」


遂に見限られただろうか
何も言えていないというのに
何も言うことが出来なかったから








「……俺から、言ってやろうか?お前の言いたい事を」








「…………え?ジェミニ、今、何と……」


己の口から出したい、短い言葉
出来る事ならば言って欲しい、短い言葉
それが何か、もう既に分かっていると言うのか
……そして、この口の回らない男に与えてくれるというのか


「二度も言わせる気か?それなら、ナシだ」


フイ、と顔を逸らされてしまう
……逸らした顔は、一体どのような表情をしているのであろうか
ああ、やはり己は彼を欲している
どうしようもなく、欲しているのだ


「……気持ちは有り難いが……大丈夫だ。是非、拙者の口から言わせてくれ」








さあ、動かない口を無理やり動かして、今度こそ、