お前のために何もしてやれはしない
それでも、








手を取り隣で








元から諦めた恋だった
慕っているのは自分の勝手だから、それで良いと思っていた
ただ、どうしても消すことのできぬ己の想いを許してほしいと願っていた


「そう思っていたのにな……分からんものだ」


今、自分の隣には最も望んだ者がいる


「不満か?」


「まさか。拙者には分相応な程の幸せを手に入れてしまったと思っただけでござるよ」


そう、本当に分相応な程自分は幸福だ
諦めたはずのものが叶ったのだから


「分相応……ね。まあ俺を手に入れたとなれば当然か?」


半分茶化して彼は言ったが、実際の所は本気だろう
何しろ彼はプライドが高い


「その通り。拙者は本当に恵まれておるよ……ジェミニ」


己が望んだ者
その名を隣で呼べるだけで幸福だと感じる
……我ながら安上がりな男だとは思う
だが、それでも良い


「そこまで言われるとくすぐったいな……シャドー」


「何だ?」


「恵まれているのはお前だけじゃない……俺だってそうさ」


「……そうだろうか」


正直、自信がないのだ
己が彼を手に入れて良かったのかどうか、分からない


「そうさ……大体、俺が他の誰よりも好きになったのに……それを拒む気か?」


「そんな……そういう訳では……」


拒むなんて、できない
けれど、






「だったら素直に満足すればいい……なぁシャドー、俺はお前が隣にいるだけで幸せだよ」






そう言って浮かべた笑顔を見て……迷いが消えた
勘違いでも、思い上がりでも構わない
……きっと、この表情は自分だけのものなのだ
自分だけが、他の誰でもない自分がジェミニをこの表情にできるのだ


「……それがお主の幸せだと言うのなら、拙者は」


お前のために特別なことは何一つしてやれない
それでも良いといってくれるなら、その表情を守れるのなら、






「拙者ははこの身体が朽ち果てるまで……いや、朽ち果てようともお主の傍にいると誓おう」






その証に、西洋の騎士がするような忠誠のくちづけを