わたくし、こういう場合にどうしたら良いのかよく分からないであります……
23時の幸せ
わたくし、今動けません
それは、わたくしの身体がちょっと強すぎるくらいの力でしっかりと抱きしめられているからであります
「ファイヤーマン……?」
「…………」
お返事がありません
抱きしめられているので顔は見えませんが、どうやらわたくしを抱きしめているファイヤーマンは今スリープモードの様であります
……きっとお疲れなのでありましょう
ファイヤーマンは普通、こんな風に無防備になったりはしないのであります
ヒーローたるもの、常に警戒を怠ってはならないのだそうであります
「けれど……それならなぜお部屋へ戻られなかったのでしょう?」
わたくしを抱きしめて座っているのはあまり宜しくないと思うのでありますが……
……でも、ちょっとだけ、この状況がわたくし、嬉しいであります
だって最近、ファイヤーマンとはお仕事の都合でなかなかご一緒できるお時間が取れなかったでありますから
いつものようにお話をするわけでも何でもありませんが、わたくし嬉しいのであります
「でも……流石に何時までもこの体勢は苦しいであります……」
それに、このままじゃファイヤーマンにお布団を持ってきてあげることもできないであります
わたくしではファイヤーマンをお部屋へ連れて行って差し上げることもできませんし……
「……ファイヤーマン、起きてほしいであります」
やはり、わたくしこのままではいけないと思うので、ファイヤーマンを起こすことにしたであります
解放していただければ、お布団を持ってきたりE缶を持ってきて差し上げたりできるであります
このままの状態よりもファイヤーマンのお役に立つことができるであります
「…………ん、あ、アイスマン……」
わたくしの呼びかけに反応して、ファイヤーマンが起きて下さったであります
流石に起きた直後だからでしょうか、何時ものようなテンションではないようであります
「起きたでありますか?」
「ん……ああ」
「あの、お部屋に戻られた方がいいのではありませんか?もし、戻られるのが面倒だというのならばわたくしお布団を持ってきますので、その」
「……別に良い」
「でも、その、あの」
わたくしはちゃんとした環境でお休みになられた方が良いと思うのであります
多分、ファイヤーマンも分かっているはずだとは思うのでありますが……
「アイスマン」
「はい」
「……ありがとう。部屋にはもう少ししたら帰る。だから、」
もう少しこのままでいいだろうか?だなんて……そんなこと言われたら、わたくし、
「勿論であります……」
お断りするなんてできないであります……!
先ほどよりも優しく、でもしっかりと抱きしめられているわたくしの体温は少しずつ上がっているみたいであります
特に、ほっぺたが熱くなってきているようであります
……きっと、ずっとくっ付いてる所為であります
そうに決まってるであります
……本当はちゃんと分かっているであります
でも、少し恥ずかしいのでそういうことにしても良いでありますよね?