見たくない(スター+ファラオ)

まだ、始まったばかり(スター×クリスタル)

知らない(ファラオ→クリスタル)

電流(スター×クリスタル)









































「……君は」

誰なのだろう、この者は

「ファラオ、ファラオマンだ」

「ああ、思い出した。もしかして、彼に用なのかい?」

我を知っている……か。

「分かっているなら話は早い。彼の者を呼んでもらえるか?」

「うーん……それは、無理だね。クリスタルは何時も、君に会いたくないと言うから」

「……」

無礼な男だ。

「だから、申し訳ないけれども……お引き取り願えるかな?」

「フン……。そう言われて『ハイそうですか』と帰ると思うか」

「……なら、僕は君を止めないといけない」

「ほう、何故だ?」

我を見る目に宿るは、それまでの振る舞いとは違う真っ直ぐなもの。

「君はきっと、クリスタルの為にならないよ」

「……それは、そなたが決める事ではないな」

「そうだね。うん、そうだ。でも、君がやってきた後のクリスタルは何時も、悲しそうな顔をするから」

悲しそうな?

「僕もどうしてそんな顔をするのか、その理由をちゃんと知っている訳じゃないよ。でも、分かる。原因は君だ。君が何かをしたんだ」

「我は何もしてなどおらぬ」

我がするのは、ただ一つ。彼の者に愛を囁くのみ。

「……そうかもしれない。でも、クリスタルが悲しい顔をするのは事実だ。僕はクリスタルのそんな顔を見たくないんだ」

目の前の男の口は、止まらない。

「愛する人を悲しませたくなんか無いんだ。僕にはクリスタルを悲しませないようにすることしか出来ないから……。だから、お願いだ。帰って欲しい」

……そういえば、

「…… 我だって、そちと何ら変わらぬよ」

我は彼の者の、表情を幾つ知っていただろう?











「……来客でしたか?」

疑問形だけど、きっと君は誰が来たのか知ってるね。
君は聡い。
長所の様に響くそれは、君を悩ませている。
僕は、知っているよ。

「んー……まぁ、ね。ああ、そうだクリスタル、少し話さないかい?勿論、君が忙しくなければ、だけど」

僕の言葉をどう思ったんだろう。
一瞬だけ考える様に視線を泳がせてから、君は笑った。

「良いですよ。私も……貴方とお話したい事がありますし」

細めた目じゃ、僕は何も分からない。
どうだろうね、僕、変な顔しなかったよね?

「…… 私に話したい事があるのでしょう?私の話はそれを聞いてからで結構ですので……お先にどうぞ」

そう言われてしまえば、僕にもう逃げ場は無い。
勿論、逃げる気がある訳ではないのだけれども……。この後一体どうなるか、まったく予想がつかないからね。
もしかして、ということもあるかもしれない。

「……クリスタル」

名前を呼んで、そして深呼吸。
僕たちロボットのそんな行為に意味があるのかどうかは、よく分からないけれども。

「僕は、君の全てを愛しているよ。例え君がどんな姿をしていようと、どんな事をしていようと構わない。僕は、君の全てを受け入れる。君が愛しているのは、外見だけじゃない。中身だけでもない。君がもしかしたら嫌う君の部分も含めて全て……ありのままの、君らしい君を、愛しているよ」

「……」

「……」

気まずい沈黙。
お互いの口が動かないだけで、瞳だけはしっかり合っている。
でも、そこからは何も読み取る事は出来なくて。

「スター」

あまりにも色の無い声で呼ばれた時、正直覚悟をしたよ。
君というたった一人の……僕の運命の恋人を、諦める覚悟を。

「……」

声が、出なかった。
君の名を呼ぶことも出来なくて……ああ、怖いんだって思った。
勿論、失う事が。

「……どこまで、知っていますか」

何が、と聞き返す事はしない。
それくらいは知っているさ。
無断で悪かったとは思っているけど……それでも、知りたかった。
君の全てを。

「君が生まれたところから」

「そうですか……。つまり先ほどの言葉は……それを知った上で、という事ですね……」

いつの間にか合っていた瞳は合わなくなっている。

「クリスタル……」

「スター、貴方は……何時から、私の『演技』に気がつきました?」

『演技』
違う、違うだろう?

「演技?何を言っているんだい?君は、ただ……」

幸せだったよ。
君が受け入れてくれている事が、何よりも嬉しかった。

「ねぇ、スター……。私は、ここまで貴方にしてもらってもまだ怖いんですよ。とんだ臆病者でしょう?」

瞳が合う。
その瞳は笑っているのに、泣いているようで。

「クリスタル」

涙なんか流れる筈も無いのに、それが誰にも見られる事の無いよう抱きしめてあげないといけない気がした。


「……」

抱きしめた身体は力を込めたら割れてしまうんだろう。

「僕は、君に笑っていて欲しい。出来る事なら僕の傍で。君が笑ってくれるのなら、僕は何でもするよ。君を怖がらせる事なんて、絶対にしない」

もっと言いたい事はあった気がするのに、どんなに言っても足りないのに、それ以上は言えなかった。

「……スター」

声と共に、回される腕。
上げた顔は、

「ありがとう。……そして、今まで御免なさい。今なら、確信を持って言えます」

何故か上手く瞳に映らなくて、慣れない手付きで口元を覆うマスクを外す。

「私も、貴方を愛しています。貴方の為なら……きっと、何だって出来る」
初めてみる君の素顔は、誰よりも美しくて、誰よりも幸せそうだった。











そなたは信じない。
我がどれだけ愛しいと思っているかを、絶対に信じようとしない。
我は知らない。
そなたが一体何を抱え、何を思い、何を悲観しているのかを知らない。
故に、我には分からない。
そなたが何故、信じようとしないのか、その理由が分からない。

「…… 悲しい顔、か」

見た事がない。
故に、想像もつかない。
あの美しい顔が悲しみに染まるという事実を、この前まで知らなかった。

「……」

知らないものは知りたいと思う。
けれど、知る事が出来ないと感じてしまう。
彼の者はきっと、我に弱みを見せる事を良しとしないだろう。

…… 何も進まない、平行線、終わりが見えない。
我に諦める気はなく、彼の者もそうだろう。
だが、一縷の望みに縋る気持ちで、我はまたあちらへと足を運ぶ。

明日からまた、遠く離れた土地へ行かねばならない。
昨日は無理であったが……今日こそ、そなたの顔を見る事が出来るだろうか。











見た瞬間、分かったんだ。

「君こそ僕の運命の人だ!そうに違いない!」

「違うと思いますが。多分気のせいです」

なんだ気のせい……ってそんな訳ある筈ないじゃないか!
君を見た瞬間に感じたこの想い、本物以外の何物でもないよ。

「愛しい人、君の名前を聞いても良いかい?」

「名乗る程のものではありませんので」

そう言って去っていこうとする君。
君にも用事や事情があるだろうからね、無理に引きとめたりはしないよ。
それに、ね。
僕たちは運命で結ばれているって、分かっているから。
きっとすぐ、会えるだろう?そう思ったのさ。

「……実際、そうだったよね。姿が多少変わっていたけれど、僕にはすぐ分かったよ!」

「そうですね。あの時ばかりは、私も驚きましたね」

驚く様な事かな?
僕が君を分からない筈が無いのに。

「多分、貴方だけですよ」

「ふふ、そんな事を言うと調子に乗るよ?」

当たり前の事だけど、君に認めてもらえば、それは特別になる。

「それ位が貴方らしいですよ、スター」

そう言われたら、いくらでも調子に乗ってしまうよ!