嗚呼、愛シキ(マース←ナパーム)

難シキカナ(マース←ナパーム)

規律違反ハ親告罪(マース←ナパーム)

相容レヌハ罪カ試練カ(マース→←ナパーム)









































嗚呼、愛しきかな愛しきかな
これほどまでに完璧なものを俺は見た事が無い。

「嗚呼、持って帰りたい……」

「で、俺の兵器博物館に飾るんだ……。嗚呼、やっぱり飾るのはあそこだな。目玉展示としては申し分無い」

「出来れば設計図も欲しいとこだが……、博士に頼んで書いてもらうか……」

「そしたらレプリカを作って……。やっぱり内部構造が分かる方が楽しいからな……」

「…… 誰か知らないが、何をぶつぶつ言ってるんだ。というか放してくれ」

「嫌だ」

放す?とんでもない!
こんな理想に敵ったものを手放すなんて、俺には出来ない。

「実力行使されたいか?」

実力行使、つまり実戦。
……素晴らしいじゃないか!

「見せてくれるのか!?嗚呼、なら是非お願いしよう!」

「……」

「何だ?どうした?」

「いや……お前、変わってるな……」

……変わっている?
嗚呼、よく言われる事だ。

「それがどうした?」

何か問題でもあるというのか。
それはどうでも良いが、俺は早くお前を持ちかえりたいんだが。

「……いや、ああ、そうだ。お前、名前は」

「DWN039・ナパームマンだ」

「俺はマースだ……。で、だから放してくれないか?」

「嫌だ」

嗚呼、こんな愛しきものを手放す理由がどこにある?











腕を掴まれたあの日から早10日。
あの日を再現するかのように、ほぼ毎日俺の腕はアイツが掴んでいる。

「……またか」

「マース殿!今日こそ俺と一緒に来てもらいたい!」

「嫌だと言っているだろう!いい加減諦めろ!」

「無理だ!」

「言い切るな!」

続く押し問答。平行線の意見。
何を言ったところで、コイツの意思は曲げられない。

「……そうか!」

「!?」

突如聞こえた声に、嫌な予感が湧き上がる。
……流石に10日間押し問答だけしていた訳じゃない。
何とか引き出した情報から、分かった。
コイツは本当に、

「条件も提示せず、勧誘して悪かった!俺に出来る事なら何でもしよう!だから共に来てくれ!」

……本当に、変わってるんだ。

「何でそうなる!?」

「……?駄目か?」

「駄目だ。俺の要求は『いい加減諦めろ』それだけだ」

誰が好き好んでガラスケースに収納されたいんだ?

「……」

「で、放してもらえるか?」

「……嫌だ」

「ナパーム」

諭すように言えば(これだとどちらが年齢設定的に年上なのか分からない)しぶしぶといった感じにやっと腕が解放される。

「……」

「何度言われようと、俺の返事は変わらない。嫌だ」

「……貴殿が何度断ろうとも、俺の気持ちも変わらない。来て欲しい」

押し問答が、今日も終わらない。











つまりは、言わなければ何も変わらないだろうと言う事だ。
いや、もしかしたら言ったところで何も変わらないのかもしれない。
それくらい、コイツは変わってる。
……いや、この件に関して言えば変わっていると言うのは正しくない。
『何も知らない』んだ。
……言ってみれば俺も単純すぎるという事なんだ。

「マース殿、一体何処に居られるのかと思った!今日こそは――」

一昨日で一ヵ月、昨日がなくて、今日。

「いい加減諦めろ!毎日来たところで俺は折れたりしないぞ!」

「毎日?昨日はお邪魔していないが?」

「昨日以外は一ヵ月毎日来ただろうが!」

「本当は昨日もお邪魔したかったのだが。マース殿に会えないのは酷く、辛い。しかし昨日は博物館の月に一度の大掃除!マース殿を迎えるとなれば、手を抜く訳にもいくまい」

「……俺が所蔵される前提にするな!」

会話の内容に進歩は無い。
コイツの考えや価値観についても同様だろう。
……だから、だ。
俺はいつの間にか、変わっている。
たった一日、それだけに過ぎない。
それなのに、少しどころではない程――と思ってしまった。

けれどお前にはきっと分からない。
ならば言う必要性は無い。
お前の考え方が少しでも変われば、俺は……。











はてさて一体この状態は、

「嗚呼、マース殿!」

「……よう」

一体どちらに取るべきなのだろうか。

「此方へ足を運んでくださったという事は、遂に俺の博物館へと……!」

「違う。それだけは何があってもお断りだ」

断ると、何時も少しだけ(本当に少しだけ、だ。どうせ3秒後には持ち直す)落ち込んだ様な顔(というか目か)をする。
そうさせたい訳ではないが、こちらも死活問題だ。
一生朽ちるまでガラスケース?御免だな。

「むむ、まだ承知して頂けないか……」

「承知する気は無いと、何度言ったら分かるんだお前は」

分からないのは困るが、分かられても多分俺は……困るんだろう。
今は、接点が切れたくないと願うようになってしまったから。

「何度言われても俺には分からない」

純粋ではないと思う。
邪でも無いと思う。
だからこそ、お前が俺に執着する理由が分からない。
この状況と状態は一体、何なんだ?。

「俺は、貴殿が欲しいだけだというのに」

欲しがられても、ガラスケースにしまわれるのなら。

「……拒否以外に、答えは無い」