understand?
……うん、もう一回言ってもらっても良いかな? いや、やっぱり止めとこう。聞き間違いにしては、酷過ぎるよこれ。もし聞き間違いじゃなかったらどうしようか。
酷いと思わない?
だって僕は今まで、君とはそれなりにイイ友人関係を築いてきたと信じていたんだよ。
そりゃあ、時々何か変だなぁと思う瞬間もあったよ?
でもそういう君の様子にオーバさんが何か言う事はなかったから、そんなものだろうと流していたけど……今思えば、その時点で疑っとけばよかったのかも。
と言っても、こういう事態って普通想定しないよね?
だって僕達は男同士なんだよ?
「…………」
「ヒョウタ」
僕の名前を呼びながら、詰められる距離。用意周到だよね、全部分かってやってるのかな。
僕の後ろは壁で、前には君。つまり、逃げ場はない。
ね、頼むから逃がしてよ。
もしくは、さっきの言葉撤回してくれないかな?
目が本気って言ってるのは痛いほど分かってるけどさぁ……。
「ヒョウタ」
壁に縫いつけられる僕の左手。顔と顔の距離は多分10センチ以下。
顔なんて見れる訳が無いけど、息が掛かるわなんか当たりそうな気配がするわだから、間違ってないと思う。
あ、でさ、これって、凄く……凄く、ヤバいんじゃない?
僕の色々な意味での身の安全、ってやつが……。
「で、んじくん……っ。はなし……!?」
縫い付ける右手を振り払おうと『ちょっと』力を込めたら、
「……っ!!?」
……デンジ君の身体を逆にふっ飛ばしちゃった。……向こう側の壁まで……。
いやもう、それは盛大に。
ああ、因みにここはデンジ君の家で、僕が背を預けていた壁との距離は5メートルくらい?
僕は仕事が仕事だから力はある方だと思うけどさぁ……デンジ君、どれだけ力無いの君。
「あ……大丈夫?」
「…………」
なんか動かないんですけど……。いや、大丈夫だとは思うけどさ……。
「……ヒョウタ」
漫画みたいに大の字になっていた身体が、上半身だけ起き上がる。
「あ、動いた……良かった」
頭を打つって洒落にならないからね……。
僕と違って、ヘルメットしてる訳でもないからね、君は。
「良くない。本気で吹っ飛ばしただろ」
ずりり、と身体を引きずる様にして、デンジ君はまた僕に近づく。
ああ、せめて立ちあがるくらいしておけばよかった。
後悔しても、実行しようとしても、何故か身体は動かないんだけどさ。
「何それ。僕が悪いみたいな言い方して……元々、デンジ君が悪いんじゃないか」
「俺は悪くない」
「な……っ。君がさぁ、あ、あんな事言うからじゃないか……!」
「あんな事?」
そう、全てはアレの所為。
君がそう……、
「ヒョウタが好きだ。愛してる」
「……っ!!」
そう、こんな事言うから。
「…………」
「な、何」
「返事は、今じゃなくて良い」
ああ、何だろうねこんな時だけ格好付けてさ。
……いや、もしかしたら余裕が無いだけなのかもね。
何だろう僕のリズムも何もかもぶち壊し乱れまくり!
だから、も、勿論断るに決まってるよ? でも……答えをすぐ出せないのは……多分きっと、君の所為。