白黒的絡繰機譚

おやつはお手製で

『小腹の空く午後三時、ボインゴは台所へと向かったぞ!』
そう始まるのが、今日の物語。

「あ、あ、あの……あの」
「ん? なんだよボインゴ」
「な、な、なにをしてる……ん、です、か……?」

ボインゴが良い匂いとこのトト神の予言で台所へやってくると、なんとそこにはホル・ホース!
しかもエプロンなんかつけて、ホットケーキを焼いているぞ。

「見て分かんねーか? それともボインゴ、お前まさかコレを食った事がねぇとか言わねーよな?」
「……! あ、あります……ハイ」
「だよなぁ? ならもっと嬉しそうな顔しろよ。ガキってのはこういうので素直に喜ぶもんだぜ」

ホル・ホースはそう決めつけます、
でも暗ぁい性格のボインゴには、ホル・ホースが焼くホットケーキを素直に喜ぶなんて事は出来る筈もありません、
どう考えても怪しさ満点!
……でも。

「……あ」

『ボインゴは「ありがとう」とちゃあんとお礼を言って、ホル・ホースからホットケーキをもらいました。一口食べるとビックリ!ホル・ホースが作ったなんて思えないほど、ホットケーキはおいしかったのです!』

「……イイ予言でも浮かんだか? ボインゴ」
「あ……その……ハイ」
「んじゃ、食うよな?」

ホル・ホースが差し出したホットケーキは、二段重ねのふっわふわ!

「あ……あり、ありが……とう」
「味わって食えよ。このホル・ホース様の料理はお高いぜ?」


ホットケーキを料理と言い切ってしまうのはさすがホル・ホース。

「えっ」
「オイオイ、別に金とる訳じゃねぇから安心しろよ……ホラ、冷めちまうぜ」
「あ、は、……ハ、イ」

こうしてボインゴは何故かホル・ホースから、おやつにたっくさんホットケーキを貰ったよ。
なんでこんな事をしてくれたのかはよく分からないけれど、おいしかったなら問題無し。
やったねボインゴ!





「……別にそれは良いんですけどね。片付けさえちゃんとしていただければ。それはともかく、この状況は何なんです?」
「いやぁ、ちいっとばかし作り過ぎちまってな? 捨てる訳にもいかねぇだろ」

ボインゴにはたらふく食わせたし、その兄貴にも食わせてやった。
それでも余っちまってるのは流石に俺もおかしいと思うぜ?
だが、実際余ってるもんは仕方ねぇ。
俺自身は、あんましこういうモン好きじゃねぇんだよ。


「それはそうですが。私が言いたいのはそういう事ではなく」
「んん? 分かんないかい執事サン」
「……」

向かい合う位置に座って、真ん中にはホットケーキ。俺の手にはフォーク、刺さってんのは一口大。
先が向けられてんのは俺じゃなくて、目の前。
……分かってんだろ?分かってるって顔してるモンなぁ?

「顔逸らすなよ……ホラ、アーンしてハニー?」

どっちかっていうと、俺はやってもらう側なんだけどヨォ。
特別だぜ?

「……誰がハニーですか、誰が」

そりゃあアンタの事さ。
赤くなっちまってさぁ、なんだ、結局食うんじゃねぇか。

「……捨てる訳に、いかないでしょう?」

そういう事にしといてやるよ。
ホラ、皿ごとやるから食っちまってくれよ。
……俺もやっぱり、一枚くらいは食っとくかねぇ。
アンタみたいにハチミツなんてかけたら胸焼けしちまいそうだけどな!