白黒的絡繰機譚

空気より軽く

こういうのって軽いくらいが丁度良いんじゃねぇの、なーんて今更思ってみる。
何が? ……ああ、俺と盾の事ね。
俺と盾の事、きっと軽いくらいが丁度良い。
ま、それは、

「あくまで俺の基準だけど」

だから、別に休日には必ずデート、なんてことはなく。
今日は電話だけ、つかまぁ……大体、電話だけなんだけど。

『だろーな……』

携帯の向こうの盾の声は、どう考えたって寝起き。
オイオイ、もう12時だぜ?もしかして昨日はゲームで夜更かしかよ盾。

『で……何の用だよ……』

さっき寝起き、って言ったけどどうも違うっぽい。
どっちかっていうと、寝ぼけてるに近いらしい、盾は。
多分頭に寝癖があって、枕に半分顔が埋まってる(声がこもってるから、十中八九そうだと思う)

「んー……あー……別に?」

『……はぁ?』

上がる語尾。
あれー……もしかして盾。

「なに、怒った?」
『…………』

無言は数秒、そして。

「あ……っ」

俺の耳に響くのは、ツーツーツーなんて音。
これって完全に怒らせちまったかなぁ……。

「まったく……盾は寝起きが悪いのか……」

この態度からすると、盾はどうも俺の電話で起きたらしい。
多分寝ぼけてて、画面はあまりちゃんと見なかったんだろう。
悲しい事に、盾は電話をかけたのが俺だと分かると出ない事がある。
盾の癖に、ちょっと生意気なんじゃないのか?

「あー……」

なぁ、盾。電話に理由っているのかよ?
タイトルも本文も何もなしでメールなんて送れないけど、電話はそうでもないよな?
ま、なんにも喋らないとただのイタ電なんだけど。
それでもさ、俺は盾、お前と何でも良いからコンタクトがとりたいんだよ。
だってお前も知ってるだろ?俺盾の事好きだもん。
で……お前も俺を好きな筈なんだ、俺の記憶に間違いが無ければ、だけど。

「もう一回……うーん……」

多分、もう一回かけたところで、盾は出ないだろう。
二度寝中かもしれないし、もうちゃんと起きて、今度は画面をしっかり確認するかもしれない。
悲しい事に盾の俺に対する仕打ちは、よく言えばツンデレだ。
……よく言えば、だけど。
ま、慣れたけどね俺は。
寧ろそういう盾が良いと思うよ俺は。決して強がりとかではなく。

「あー……」

一回閉じた携帯を開いて、閉じて、そして枕にボトリ。
なんだろうな、俺、盾と同じ歳くらいに戻った気がするわ。
思春期ってヤツ? うんなんかそんな感じ。
あの頃、今みたいな事してたかって言ったら違うとは思うんだけどな。
とりあえず、なんだろうな……。

「青臭いわー……俺」

恋に恋する?そんな事は絶対ないんだけど。
でも、もしかしたらそれに近い様な気もする様なしない様な。
きっとお前の妄想とか伝染してるよコレ、どうすんだよ盾。
なんでこう、青臭い恋愛って軽いノリの癖に、こんなにハマるかな……。
とりあえずお前がキレてうっかり出るまで、携帯鳴らすわ覚悟しろ!