白黒的絡繰機譚

けれど手段はそれ一つ

言葉というのは、面倒だ。
気持ちというものは本来、わざわざ伝えるものではないのだから!
……それなのに。

「ふぁ、ファイヤーマンは、どうして、わたくしをいじめるのでありますか……?」

抱きしめようとしたら、逃げられて、見つめていたら、逸らされて、近づいてみたら、責められる。
何故だ? 何故分かってくれない?
俺の気持ちは、想いは、こんなにもアイスマン、お前に向かっているのに!

「アイスマン……」

まるで、泣かしてしまっている様なこの状況。
何故だ?俺は誰もそんな顔をさせないようにする立場の筈なのに

「……」

小さな身体が、顔を伏せて更に小さくなっていく。抱きしめたいような姿は、けれど俺を拒絶している。
抱きしめたい、触れたい、そんな思いが、回る。いつもそうだ、見る度に思って、浮かんで。
俺は、それを実践したいと行動しただけ。その行動原理の想いが、どうして届かない?

「いじめてなんか、いるものか」

正義の味方が、そんな事をする訳がない。

「……そうなのでありますか……?」
「そうだ」

そうに決まっているのに、何故だ? どうしてこんなにも、伝わらない?

「何時もいきなり凄い勢いで向かってこられるので、わたくしはてっきり……。ああ、ごめんなさいであります」

誤解?は解けた……のだろうか。
けれど、顔は伏せたまま。これを上げさせるためには、俺はどうしたら良いのだろう。
どうしたら……?

「……アイスマン」

ふと、思った。
今、俺がすべきことは『行動』ではないのではないかと。
面倒でも今必要なのは『言葉』ではないだろうか?

「なん……で、ありましょうか……?」

けれど、何と言ったものだろうか?
伝えるべきは、俺の想い。熱く、熱く、燃えたぎるこの想い。
それは分かっているのに……言葉が見つからない。
俺のこの想いは、一体言葉にすると何になるのだろう?
近づきたいと思う。抱きしめたいと思う。触れたいと思う。悲しげな顔ではなく、笑顔が見たいと、思う。
この想いは、確か、ぴったりと当てはまる、言葉がある筈だ。

「……!!」

ああ、そうだ、やっと繋がった。
お前へのこの想い、その名前と、伝える言葉は、

「お前を、誰よりも……愛しているんだ!アイスマン!」

愛、だ。

「愛……」
「……!め、迷惑だったか!?」
「いえ……その……」

上げられる顔。その、表情は

「……とっても、嬉しいであります」

今までで一番、俺を燃え上がらせるような、そんな笑顔、だった

「アイスマン……――」

そんな笑顔を見せてくれるのなら、何度でも言おう。
お前に愛していると、何度でも!