白黒的絡繰機譚

どんな味?

ファーストキスは、レモンの味。
……なんて、一体どれだけ昔から言われ続けてるんだろう。
ぼくはそんな夢みたいなこと、信じないよ。だって、

「木乃伊の唇じゃ、レモンの味なんてする訳ないね……」

きっとカサカサして、味どころじゃないよ。

「……?」
「ファーストキスは、レモンの味。って、言うでしょ」
「ああ……、確かに。俺のじゃあ無理だろうな。八墓のもしなさそうだけど」
「多分しないね……。ぼく、すっぱいの嫌いだし」

レモン味なんて、好きじゃないよ。
あんまり味に、こだわりがある訳じゃ、ないけど。

「大体、味なんてするもんじゃないだろ」
「そういうもの?」
「多分」
「ふーん……」

どうでも良い会話。ぼくと木乃伊の会話っていつもそんなもの。
でも、そんな会話してもいいの、木乃伊位だよ。

「……してみるか?」
「……何を?」
「いや、キスを」
「木乃伊と……?」
「他に誰と」

まさか他にする相手でもいるのか、なんて続くのは、そういう関係だから。
多分誰も知らないね。言わなくてもいいし、知られなくてもいい事だし。ぼく達を見て、それが分かるほど恋愛に詳しい子なんかこの学校にはいないよきっと。
だって好きになったら呪って振り向かせればいいっていうのが常識なんだから!
ぼくもそれが一番楽なんじゃないの、と思わなくもないけど。

「いないよ、そんなの」

一人で十分だし。
そう返事したら、溜息を吐かれた。

「俺がいい、とかじゃないのかよ」
「そっちの方がいいもの?」
「普通そう」
「普通じゃないからいいでしょ」
「そうくるか……」

まあ否定はしないけど。
そう言って、ぼくを否定しない木乃伊が好き。

「どうせいつかはするんだし、今しとく……」

好きって言うのは、触れ合う事なんだって。誰が言ってただろう。

「じゃあ蝋燭消さないと」
「あと包帯取って」
「顔出さないとなぁ」
「うーん……」

お互いに、それはちょっとと思ってしまう。そりゃ布も、髪も邪魔だし、蝋燭は危ないし、それは分かってる。けど。
近い距離で固まって、なんとなく、なんとなく嫌じゃないけど、二人とも戸惑う。

「やっぱり、またこん」

……どには、ならなくて。

「き、木乃伊」

なんだ、包帯取らなくてもキスって出来るんだ。でも、燃えたらどうする気だったんだろ。

「どうだった?」

お、驚いたから、味なんて、そんな。
でもやっぱり、思った通りカサカサはしてたことだけは、分かって。
それで、その……ああ、落ち着かない……。
……髪、伸ばしてて、良かった。