白黒的絡繰機譚

期間限定

吹雪家の事情は捏造です

手の中のおにぎりをじいっと見つめる。
フィルムじゃなくて紙みたいなビニール(これって何て名前なんだろう?)に包まれたそれは、他のよりちょっと、高いみたいだ。

「なんだよ。そういうの嫌いか?」
「ううん、そんな事ないよ。こういうの普段買わないから、なんか、珍しくって」

そう、こうやっておにぎりを外で買うなんてことしない。
僕にとっておにぎりは、段々記憶から薄れていくおかあさんが作ってくれたものと、普段おばあちゃんが作ってくれたものと、マネージャーの3人が作ってくれるもの3つだけ。
だから古臭いかもしれないけど、おにぎりを買うってことがあんまりピンと来なかったりする。お弁当を買う、ならそうでもないのに。

「……そうかよ。で、それだけか?」
「あ……。どうしようかな……」

僕は今、おにぎりを一個だけしか持ってない。ただの間食用のおにぎりだけど、僕には一個だけじゃ足りない。僕は染岡くんより小さいけど、染岡くんよりいっぱい食べるから。
今こうやってコンビニにいるのだって、その所為だ。さっさと寝て空腹に耐えようと思っていた僕の腕を引いて、連れて来てくれた。染岡くんは本当に、優しい。だから僕は染岡くんが好き。……ううん、違う。例え優しくなくても好きなのかもしれない。とにかく僕は染岡くんが好きなんだ。

「つかよ吹雪、そんなんじゃなくてもっと腹に溜まる具のヤツ買えよ」
「え、うーん……。でもおにぎりっていったら昆布じゃないかなぁ。おばあちゃんはいっつも昆布のおにぎり作ってくれるよ」

コンビニのおにぎりとおばあちゃんのおにぎりはきっと違うけど、やっぱり僕が食べたくなる具入りのおにぎりは昆布なんだ。
そんな僕を染岡くんは数秒、じっと見てから、おにぎりの並ぶ棚に手を伸ばした。

「これ、期間限定だってよ」

そう言って、期間限定って書いてあるおにぎりを二つ手に取る。

「へぇ、おいしそうだね」
「じゃあ、お前食えよ」

染岡くんは、二つのおにぎりを二つとも、僕に押し付ける様に渡してきた。

「え?」
「普段そんなの食わねぇんだろ」
「そうだけど……。染岡くんが食べるんじゃないの?」
「俺は良いんだよ。お前が喰えよ」

ほら買うぞ、と染岡くんは僕の背中を押す。
有無を言わせないそれに、僕はそのままレジでおにぎりを三つ出して、お会計をしてもらう。
いいよ、悪いよ。そう言ったのに、染岡くんは勝手にお金を出してしまった。それは凄く悪い気がして返すよ、と言ったら軽く頭を叩かれた。

「俺が連れてきたんだから、良いんだよ」
「でも染岡くん……」
「……あー、じゃあ今度はお前が奢れよ。それで良いだろ」
「うん。わかった、約束だよ。染岡くん」

おにぎりの入った袋を携えてコンビニを出る。

「そういえば染岡くんは、これ食べたことある?」
「いや、ねぇけど」
「……じゃあ、さ」

一人だけ食べるのは、ちょっと寂しいから。
染岡くんも、一緒に。