嫁の意見は尊重せよ
泥の字、ちィっと聞きたい事があるンだがいいか?ああ、大したことじゃねェ。俺ァ今、姉貴のとこに住んでんだがそろそろ自分の住処を見繕おうと思って色々見てはいるんだが……中々な。何せまだシャバのことには疎くてねェ。助言を仰ごうにも検事側はあんまり参考にできそうなのが浮かばなくてよ。おめぇさんが一番そういうのを知ってそうだ、と思ったわけだ。例えば……、今の住処にした決め手や、不満点とかを教えちゃくれねェかい? そこに気をつけりゃイイもんが見つかるんじゃねえかとな。
「……ってことでユガミ検事に捕まってまして」
なんだか疲れた様子の先輩が事務所に帰ってきたのは、そろそろ事務所閉めたいなあとナルホドさんがぼやき始めた頃だった。
「へえ、おつかれさま。そっか、かぐやさんが出所してくるのも近いからか」
あの日からも随分経った。今、夕神さんは管理も兼ねてかぐやさんの部屋に住んでいる。
流石に俺が触るのは不味いモンがあると思うから頼まァ、と苦い顔で頭を下げてきた夕神さんと一緒に、あの部屋の鍵を開けた瞬間を思い出すと今でもちょっとげんなりする。
多分私もあんまり人のこと言えないとは思うけど!それでもアレは……アレは……ちょっと……。
結局オドロキ先輩にも来てもらって、なんとか片付いた時には3人揃って床に伸びていた。
「みたいです。……けど、オレに聞く意味あったのかなあ?」
疎いとか言ってたけど、結構ビジョン決まってるみたいだったよ、と先輩が溜息を吐く。
「そうなんです? 夕神さん衣食にはわりと拘りありますけど、住は寝れればいいみたいな人ですよ?」
昔を思い出しても、ちょっと前に遊びに行った部屋を思い返しても、布団がしければそれでいいみたいなところがあったような。実際、あの日の片付けも、かぐやさんの私物をまとめて一部屋に詰め込んで、ゴミを出して布団とちゃぶ台のスペースを作っただけと言ってもいいかもしれないし。
「そんな感じは全然なかったけどなあ。とりあえず一番譲れないとこはって聞いたら、ベランダって言われて。まあそれはギンがいるからそうなるよなあって」
「あー、だからオドロキくんに」
「でもオレは別にミケコに合わせて部屋選んだわけじゃないんですけどね……。で、次は風呂と。ユガミ検事デカいくせに足伸ばせるのがいいって……。それもう単身用じゃ無理じゃないです?って言ったら、ならファミリー用にするかねェって呑気に」
「検事ってやっぱりお給料いいんですね……」
「もうその辺りでちょっと帰りたかったんですけど、ギンに乗られて動けなくて」
「気に入られてるねえオドロキくん」
「なら裁判中にあんな攻撃してこないで欲しいんですけどね……。で、次は立地で、品揃えのいいスーパーが近いのがいいそうで」
「……夕神さん、料理しませんよ」
「しないなら、スーパーよりコンビニ近いほうがいいんじゃないかなあ。検事局っていつも忙しそうだし、夜遅いんじゃない?」
「拘りある方ですからねえ夕神さん……。文句言いつつ結局わりとなんでも食べますけど」
あ、なんだか段々分かってきたかも。
「そうなんだ。で、なんだかんだで一緒に賃貸サイト見て。ユガミ検事の家探しなのに、なんかやたらとオレにここはどうだ、あれはどうだって聞いてきたんだよなあ」
「あー……先輩、それは」
やっぱり、そういう、ことか。
思わずナルホドさんと顔を見合わせる。
そっか、先輩にはなんにも聞こえないし、見えないんだった。嘘をついてる訳じゃないから、反応もしないし。ああ、でも!夕神さん!回りくどいやり方する前に、ちゃんと感情と理由を教えてあげてください!