白黒的絡繰機譚

チープトリック

性的描写はありませんが、シチュがラブホです。

かちゃり、と安っぽい鎖が音を立てた。

「ラブホテルって凄いんだねぇ。こんなものまであるんだ」
「気になんのか?」
「……そりゃあ、ちょっとはね」

ニヤリ、と下卑た様なからかう様な顔で馬乃介が笑う。
折角お互い近くまで仕事に来ているのだから、なんて言われて呼び出された先はラブホテル。巡業の為に月単位で会ってなかったとはいえ、ストレートすぎやしないか。馬鹿みたい。
そう、馬鹿みたいと言えばこの部屋もだ。鎖に首輪に手錠に……ああ、その先は俺の「キャラ」的に口出すなんてムリムリムリ!といったところか。

「じゃあ……使ってみるか?」
「え、ええ!?これを?てかどれを!ムリムリムリ!」

口を塞いで、何時もの様に否定のポーズをとる。
けれどそれを気にする様子も無く、馬乃介は安っぽく光る首輪を手に取ると、素早く俺の首へと装着した。

「似合ってるぜ」
「やだ。取ってよ馬乃介……」
「駄目だ」

自分の立場が上だと思っているのかねこの馬鹿は。どっちかっていうとマゾじゃないっけお前。
周りを見渡すと、……あった。もう一つの首輪が。

「じゃ、じゃあ……馬乃介も付けてよ。それだったら、良いよ……?」

上目遣いと、震える声。これを使えば俺という存在が好きで好きで好きで仕方が無いこの男は、すぐ要求を飲んでしまうのだ。ああ、おかしいったらありゃしない!
かちゃかちゃと馬乃介の首に首輪を巻く。似合ってるよ、と言ったらどんな顔をするんだろうか。

「……何で俺まで」
「駄目?」
「……」

ああ、単純。不機嫌そうな顔をしてるけど、本当は嬉しいんじゃない?マゾの癖にサドぶってるお前の事だから、俺にもお前にも首輪の付いているこの状況は、結構クるものがあると思うけど。

「最後まで付けててね。……その代わり、今日は何しても良いよ。明日は移動だけで公演ないから……ね」

ペットには餌をあげないと。飼い主の基本だろう?
本当は紐で縛られてるのも首輪を付けられているのも、懇願の言葉を吐くのだってお前だけだけど。これは全部演技だから、良いよ。
全部、後で返してくれれば。

「へぇ……。じゃあ今日は寝れると思うなよ」
「やだ馬乃介ったら」

がちゃがちゃとお互いの首輪から伸びた鎖が音を立てる。
どちらの端も握るのは俺だと、コイツだけが知らないまま、今日という日がまた終わる。