沈む夜
誰だってらしくない日はある。僕だってそうだ。ビリーザキッドのフリをするのに疲れたり、馬鹿らしくなったりする夜はたまに――いや、結構あるかな。だから、乗り込んできたくせに僕の顔を見ようとも しない君もそうなんだろうって分かったんだ。
「どうしたんだい?」
「えーと、ですね。オレは今酔ってるんです」
「うん?」
「すごく、すげー酔ってるんです。……そういうことで」
ずんずん、と君がベッドヘッドに背を預けて座っている僕の方へと歩いてくる。乗り上げると、ぎしりとスプりングが軋んだ。夜ならではの音という感じがする。
「……ます」
すごくすごく小さな声で「お邪魔します」だって、さ。酔ってるんだと前置きしておきながら、昔段より ずっと遠慮しいじゃないか。言ったら機嫌を損ねるだろうから、黙っておくけれど。
そうして僕の膝は君の枕へ。赤ん坊みたいに身体を丸める君は、そのまま寝てしまうつもりなのか何も言わない。僕はただ赤毛を見つめるだけしかできないから、全く暇で仕方がないんだけどね。
「寝ちゃった?」
「……」
「うん、これは寝てるね。全く酔っばらいは仕方がないなあ」
白々しい僕の言葉。でも、これも必要なことだから。君は酔っ払って夢の中。意識は泥の底。そういうことにしておかないといけない。
「何があったか知らないけど、こんなやせっぽっちの子供の膝でよけれぼ、素面の君にでも貸すのに」
それができない君だとは知っているけれど。わりと柔らかい赤毛を撫でながら、聞こえていないことになっている君に、語りかける。勿論反応なんてあるわけがない。けれど、それでいい。
「今の君も、嫌いじゃないよ」
ロビンフッドじゃなくたって、君はきっと君だよ。