白黒的絡繰機譚

真夜中の(きっと)デート

――だって仕方ないじゃないか。
徹頭徹尾アウトローで構成されているのだから、そうするのは必然だ。
けれど少しは罪悪感もあるから、わざわざブーツを脱ぎ捨てて、足音に合わせて揺れるガンベルトは取っ払って、目的地を目指したのだけれども――。



「まさかこうなるとはねー」
「余裕あるなオタク」

呆れた顔をしているロビンを見上げる。目線は足元だけど見上げる。何故って?そりゃ今僕が見事に逆さ吊りだからさ!

「宙に浮いた瞬間、君の罠だってわかったからかな?製造元が分かってる安心感っていいよね」
「なんだそりゃ……」

現在深夜の台所冷蔵庫前。僕は深夜のつまみ食い現行犯逮捕ってところ。いや、未遂かな?冷蔵庫を開ける前にこうなってしまったし。

「ったく……。身体は育ち盛りのガキかもしんねーが、大人しく朝まで待てないもんかね?」
「食べ物のない野宿とかならともかく、ここは十分ものがあるからなあ」
「我慢は必要ない、と。それで毎朝食堂担当を困らせるんじゃねえよ」
「毎朝?失礼な、僕は初犯だよ!」
「胸張って言うことか」
「大体、僕の夜中のアリバイなんて君が一番知ってるじゃないか」
「あ?……あー……そう、だな……」

はあ、と盛大に溜息を吐いてロビンがやっと罠を解除する。
床に投げ出されると思った身体は、ありがたいことに抱きとめられた。血が降りていくことでぐらぐらする頭を抱えながら、後ろから抱きしめられるのはこの時間らしいなあなんてどうでもいいことを思ったりする。

「ったく、また設置からやり直しだわオタクのせいで」
「うーん、ごめんね?」
「……まあ、いいですけど。次はやるなよ」
「わかった、次からは君の部屋に行く」
「なんでそうなるんだよ」

そりゃ君は大抵何かお菓子を持っているし……と言うとちょっと嫌な顔をされるんだろうか。事実なのにね。
でも、夜中に欲しくなるのは甘いチョコでもクッキーでもないのが問題だけれど。

「君なら、なんとかしてくれるだろう?」
「……オタクねえ」

盛大な溜息が頭を掠める。

「そういうこと言えば色々有耶無耶に出来ると思ってるだろ」
「心外だなあ。ちょっと嬉しいくせに」
「……これだから、ねえ。ほら、アンタのお陰でやり直しだ、ちょっとは手伝いな」

身体が開放されて、ワイヤーの束やらなんやらを手渡される。手伝えなんて言うけれど、きっと僕の仕事はちょっとした道具持ちくらいだ。

「さっさと済ませて、戻んぞ。……腹減ってんでしょ」

お腹も空いてるけど、君も欲しくなった。
……なんて言ったらどんな顔をするんだろう。まあ、この場合食べられるのは僕の方なんだけど!