白黒的絡繰機譚

結局、甘い

※18禁描写有り※

「いや……無理でしょ」

カードゲームは今日も負けて、酒もなくなったので部屋へ移動。扉を閉めてキスをして、身体をベッドの方向にずらした。そしてさあ今日こそは、と尋ねたところで言われたのは冷たい一言だった。

「そこをなんとか……オタクならいけるって」
「憶測でやって、痛い目みるのは僕なんだけど?」

そう言われるとぐうの音も出ない。今からやろうとしてるのは、恋人の――ビリーの身体に無理をさせることだ。ああ、なにかって?そりゃ、セックスですよセックス。野郎同士でも出来るには出来る……んだが、まあ、女とは何もかもが違う。無理やり事に及べば、最悪医務室行きだ。

「……そんなあからさまにがっかりしないでよ。あのね、僕だって別にその……したくない訳じゃ、ないよ?ただ、その、ね?」

身長差もあって、ビリーがオレの目を見ると、どうしても上目遣いになる。これがまあ、可愛いと思っちまうオレは重症だよな。

「分かってますよ。なら、いつも通りのは別にいいんで?」
「ここまでしといて、なにもなしにするの?」

すり、と内股をこすりつけられる。コイツ、慣れてるよな……。本人曰く「君以外は全員一発お見舞いしてきた」なので、慣れてるというよりは理解してるってのが正しいか。まあ、男の煽り方なんてある意味男が一番詳しいのは当然なのかもしれない。
軽く唇を合わせて、細すぎる身体をゆっくりベッドに降ろす。両手を差し出して来るので、それに従ってもう一度口付けた。

「オタク、結構キス好き?」
「嫌いじゃないよ。……気持ちいいし」
「そりゃオレが上手いからですよ」
「ええ?僕の方でしょ」

にい、と笑う様子は本当にガキで、色気とはほど遠い。けれど、それもそれで「アリ」だと思わせてくるのだから、本当に質が悪い。

「ま、そういうことにしときましょうかね」
「その言い方は……まあいいか」

小さく溜息を吐いて、ビリーがオレの首に腕を回す。やっぱこういう動きが、慣れてると感じた。……どっかもやもやするのは、いるかどうかも分からない過去を気にしてんのかね、オレは。もし気取られたら頭突きでも食らいそうだ。
馬鹿馬鹿しい考えを振り払って、目の前のご馳走に集中する。寝転がったことで髪の隙間から、普段ほぼ隠れている形の良い耳が顔を出していた。

「ん……っ」

その輪郭をなぞるように舌を這わせる。コイツは、結構ここが弱い。もうやめて、と言うように首に回った手に力が入る。爪が食い込んで少し痛い。

「あ……。ごめん」

気がついたのか、ぱっと腕が離れる。別にこっちとしては痕だろうが傷だろうがなんともないんですけどね。ま、気にするなと言っても仕方のないことだろう。
また爪を立てることになるのは、良くないだろうと首筋をなぞりながらシャツのボタンを外していく。ネクタイを外すの、オレはあんまり上手くないんだよな。それがバレてるのか、ビリーの方から外してくれる。
白くて薄い胸板は、勿論男だから柔らかくもなんともない。
「そこ、楽しいの?」

カリ、と突起を引っ掻くと不思議そうな声が降る。

「オタクがもうちょっとイイ反応してくれれば?」
「男にそれを要求されてもなぁ」
「ま、これから頑張りますよ」
「怖いなぁ」

潰すように捏ねていくと、じんわりと固く尖っていく。感じませんよ、なんて態度だった割には……。

「んぅ……っ」

なんて、可愛い声になってんだから、こりゃこれからが楽しみですわ。男なのに、って思うのかね。でもこっちだって男だから、やりたい訳で。

「も、そこいいから……。いつもの、しよ……?」
「りょーかい」

軽くキスをして、サイドボードの引き出しからチューブを取り出す。ま、所謂ローションだな。
ビリーのベルトを外して、前を寛げさせる。一度チューブの中身を手のひらで温めてから、これまた平ったい下腹にどろり、と落とした。

「ひゃ……」
「あー、まだ冷たかったです?」
「大丈夫、だけど、慣れないなこれ」
「その先は慣れてる癖にな」

まだ半勃ち程度のビリーのそれに触れる。びくり、と全身で反応するのがオレは結構好きだったりする。ローションを塗り込むようにして梳いてやれば、じんわりと勃ち上がっていった。

「や、ぁ……」
「アンタがしろって言ったんじゃないですか。すぐ嫌がるの、どうかと思いますけどねぇ」
「だって、イかせようと、してる……でしょ」
「バレました?」

アンタの余裕の仮面が剥がれていくのが好きなんですよね、ってもし言ったらどんな顔されるんだろうな。ま、今急いで剥がさなくとも、最後にはそんなもん自分から取っ払ってくれるんだが。でも、自分の手で……って思っちまうのは、仕方がないよな?

「いじわる……ね、早く、きて?」
「アンタねぇ……」

ホント、煽り方が刺さるんだよこっちは。
脚を閉じさせて、そこにチューブの残りを直接絞り出す。冷たいだろうが、こっちも余裕なんてねぇんですわ。閉じた脚の間に自分のモノを差し込む――つまり素股ってやつだな。肉も脂肪もほどよく付いているそこの感触は、結構、イイ。

「動きますよ」
「ん……」

ローションのお陰で滑りはよく、本当に入れてるような気分になる。最初はオレはともかくビリーは気持ちいいのか?と疑問だったが、そんなのは杞憂だった。

「あっ、んんっ。ふっ……んぅ」

蕩けた顔、揺れる腰、甘い声。ああちゃんと気持ちよく出来てんだなって全身が教えてくれる。そんなの見せられて、聞かせられて、こっちの動きも早くなる。

「も、だめ。でる……んっ」
「っく……」

お互い吐き出して、一気に力が抜ける。肩で息をする姿が、なんとも。……なんとも。
――これだけで十分気持ちがいいとは、理解している筈、なんだが。

「……あの」
「うん?」
「先に謝っときますわ」
「え?……え、あっ!」

ぐい、と膝を割って、流れ落ちているものを適当に絡めた指を拒否されたところに這わせる。
……別に、全くこっちに触ってないわけじゃない。試したことはある。だが、途中で嫌だ痛いと言われれば、無理させるなんて出来ねぇから引き下がってきた。だが、出して力が抜けていることもあってか、関節2つ分ほどはおもったより簡単に入っていく。

「なん、やだ。抜いて」

いつもならそう言われたらやめることが出来るのに、どうしてだろう。止めたいと思わない。むしろその言葉に煽られる。けれど傷つけないように、ゆっくり、慎重に進めていく。なんとか指一本が中に収まった頃には、ビリーの顔は真っ赤になっていた。

「ば、ばか……」
「馬鹿ですよ」

頭じゃなくて下半身で動いてると言われても仕方ないような状態だ。コイツと繋がりたい。その自分勝手な欲求だけで動いている。

「指、増やしますね」

もう一本突き立てて、ぐちぐちと動かしていく。

「ひん……っ」
「痛いです?」
「なんか、変な感じ……」

痛くないなら、どうにかなるだろう。もうこれ以上真っ赤になりようがない顔のビリーをちらちら伺いながら、ぐるりと指を動かす。

「ひう……!」
「結構広がりますよ。……入るんじゃ、ねぇですかね?」
「なっ」

少しビリーの顔から赤みが引く。ああ、やっぱり怖いわな。理解出来る。だが、それでも指は止まらなくて。ぐちぐちと卑猥な音を立てて、広げることに必死だ。

「ん、ん……。ばかぁ……」
「そうですね」
「あふ……。そんなの、はいらない、のに」

アンタのちっこくて細い身体を傷つけるかも、とは思っている。それでも、と思ってしまうのは男だからか、それとも単にオレが強欲なのか。

「――も、いい。……いれ、て」

どれだけか指を動かしていただろう、そんなでもないんだろうか。ビリーがいきなりオレの手首を掴んでそう言った。

「え、でも」
「ここまでしといて、なに言ってんの……っ。僕がいいって言ってるんだから、はやく」
「……わかりましたよ」

指を引き抜いて、申し訳程度にほんの少し残っていたローションを塗って、そこにあてがう。

「駄目だったら、ちゃんと言ってくださいよ」

ぐ、と押す。十分慣らしたつもりだが、そんな簡単には進まない。そりゃそうだ、そんなことに使う場所じゃない。だが、ほんの少しずつ進んでいき、亀頭が飲み込まれると、その後はスムーズだ。――ああ、これが。

「……っ」
「ははっ、入りましたよ。……大丈夫です?」
「……じょぶじゃない」
「え?」

ぼろぼろ涙を流して、震えて。これが少年悪漢王?

「あつい、こんなの、しらない。あつい、……すごい」
「……」

ああ、なんて可愛い生き物。可哀想だけど、もう我慢できませんわ。

「ちょ、やだ、うごか……ひゃ、あんっ」
「ここ、イイんです?」

ぐり、と強く反応が合った場所に打ち付ける。

「ひゃう、やだぁ」

やだ、とはどっちの意味だろう。悪いのか良いのか。ああ、顔を見れば瞭然だ。だから、止まらなくていい。このまま動いて、喘がせてしまえばいい。

「ここ、ね」
「やぁ、やだ。やだ、って……」
「ほんっとうに、煽るのが上手いよオタクは……!」

ぎりぎりまで引き抜いて、穿つ。全身が跳ねたのに、口元が緩んだ。

「むり、もう、むり。しんじゃ、しんじゃぅ……」
「はは、そんときゃ一緒ですよ」

動いて、動かして、ああ、もう限界だ。だらだら涎と意味のない言葉を零す唇を貪って、ぎゅうぎゅうに締め付ける中に吐き出す。

「あ……あー……」

ビリーの身体が痙攣のような動きをして、身体の間に温かいものが流れていく。ほら、ちゃんと出来ただろう?




****




「――えーと、すみません、でした」

調子に乗りすぎた。反省しても後の祭りなわけで。後始末を終えたとこで、ビリーはシーツを被って籠城体勢に入ってしまった。

「……」
「もう二度と勝手なことしねぇから、その……許してくれませんかね……?」
「……」

ああ、これは相当怒っている。当たり前か。

「……あのさ」
「はい」

地を這うような声だ。……怒ってるからか、単に喘がせすぎたのか。

「その……どうだったの」
「へ?」
「どうだったのかって、聞いてるの」
「そりゃもう。最高によかったですけど?」
「……」
「ビリー?」

そろ、とシーツの膨らみに近づく。顔は見えねぇけど、これは……。

「なら、いい。僕も、うん……」
「ビリー……」

ああ、本当に可愛い生き物だよアンタは。
こんなの手放せるか。たまらずシーツごと抱きしめると、やっと真っ赤な顔が覗いた。

「好きですよ」
「……知ってる。僕のこと大好きでちょっと強引で馬鹿な森の王様?」

ああ、全くもってその通り!