白黒的絡繰機譚

許容範囲内

※18禁描写有り※

「……ぁ」

お互いに熱を吐き出して、君の身体がどさりと降ってくる。吐き出したらあとは今までの熱さはなんだったのか首を傾げる程に冷えてしまうから、なんか冷静になってくるよね。男ってこうらしいけど。
君と寝るようになってどれくらい経ったっけ。アメリカの召喚で未遂みたいなのが多分一回。ここ、カルデアに召喚されてからは……やめた。覚えてないや。
そもそも、アメリカの時は状況が状況だったけど、今はお互いじゃなくてもいいんじゃないかな。一応恋人同士状態で言うことでもないけど。

「重い……」

ぺしぺしと背中を叩く。掌にぬるりとした感触があった。またやってしまったらしい。君、怒っていいと思うよこれ。

「あー……。退きますから」

ゆっくりと君が僕の中と上から、外と隣に移動する。さっきまでのがっついた表情はどこへやら、もういつもの君がいる。このギャップには、まだ慣れてない。
そもそも、さあ。顔がいい男の表情のギャップってずるくない?……本人には、絶対言ってやらないけど。

「また引っ掻いたみたい。ごめんね」

指先についた、赤いもの。戦闘でだってそこまで見ない、君の血液。

「引っ掻いたってか、抉ってっからな」
「うわぁ……」

想像するだけで痛い。なのに君は、恨み言一つ言わない。
慣れっこだから?それとも……ね。

「……縛る?」
「はあ?」
「だって毎回、僕やってるでしょ。注意しようにも、最中には無理だし野暮だし……だったらもう、物理的にって」

突き上げられる度にしがみついて、引き抜かれる度に握り込んでることは感覚を覚えている。
君はその時、どういう顔をしてたっけ。そこまでは覚えてないな。

「オレそういう趣味ないんすけど」
「僕だってないよ」

ないけど、君のことを考えてさぁ……。
と、言おうと思ったら頭をわしわしとかき混ぜられる。

「ちょ、やめ」
「男の勲章ってやつなんだし気にすんなって」
「……君もしかしてそういう趣味が」
「ねぇから」

手を伸ばして、そっと背中に触れる。……うん、確かに引っ掻いたより酷そうだ。
こんなの勲章にはならないだろ。

「そんな気になります?」
「そりゃあ、ねえ」
「んじゃ、気にならないようにしましょうか」
「え」

にぃ、と君が笑ってくるりと身体をうつ伏せにされる。

「アンタの顔が見えないのが難点ですけどね」

たまにはこういうのもいいでしょ、なんて言うから。

「……悪趣味」

僕はそれだけ感想を言って、君の熱を震えて待つしかできなかった。