白黒的絡繰機譚

小悪魔ごっこ

女装ネタ

赤ってのは嫌な色だ。関わるとろくなことがない。今日もそうだ。

「アンタら、何してくれてるんですかねぇ……」

はあ、と溜息を吐く。それがにこにこ笑っていやがった皇帝陛下とドラゴン娘のお気に触ったらしい。

「何ってなによ!折角可愛くしてあげたのに!」
「そうだぞ!アイドル二人による奇跡のコラボレーションをありがたく受け取るが良い!」
「……オタクも抵抗しなさいよ」
「無茶でしょ……」

少女趣味に飾り付けられてるのは、本日一緒に物資調達に行く相棒。当たり前だが、男だ。例えちっこくて細くても。
フリルはたっぷり、ヒールの靴に……あ、これ化粧もしてあるな?いやはや、ご苦労なことで。

「もしかしてこれで行けって?」
「当たり前じゃない!デートでしょ?」
「ただの物資調達ですけど」
「恋仲の二人が街を歩けばそれはデートであろう?」
「そんなんじゃないんだけど……」
「はぁ?もしかしてこの男告ってないの?ひどい!サイテー!!」
「あー!くそっ!行くぞ!」

腕を掴んで、周りを無視して走り出す。レイシフトしてしまえばこっちのもんだ。





「……で、結局これってあの二人の思った通りなんじゃない?」

レイシフトして、降り立った街に二人。物資の調達に店を覗けば「お似合いだ」「デートかい?楽しんで」だのなんだの言われる始末。
最初は抵抗があったらしいコイツも、にっこり笑えばオマケがつくと分かった途端露骨に振る舞いだした。調子がいいよ、全く。

「かもな」
「ちょっと休憩しない?足、疲れちゃった」
「あー、そうしますか。てかオタクよく今までそれで歩けましたね」
「僕、器用だから」

適当な店に入って、席に着く。人目がなんとなく気になるから、奥にした。

「はぁ、疲れた」

テーブルの下で、行儀悪くヒールを脱いでいる。……うわ、ペディキュアまで塗ってやがる。あの二人どこまでやってんだよ……。

「ほんと好き勝手にやらせたな」
「好き勝手にさせるしかないでしょ。もう凄かったよ。ぜーんぶ、コーディネイトされちゃった」
「うへぇ……」

全部ねぇ。あの二人に全身好き勝手されるとか考えただけで怖気が走る。
……ん、待てよ。全部?いやいやいや、まさか。まさか、な?

「……あれ、もしかして気がついた?」

赤く塗られた唇が弧を描く。

「全部、コーディネイトされちゃったんだよね。僕にはこれが似合う、君はこういうのがきっと好きって」

手袋をしていない指が絡む。

「実際どうかな?君の好きなように映ってるかな?……この下も」

指が離れて、スカートの裾へ。
……ああ、

「無理しなさんなって。……顔、真っ赤だぜ」

着飾った小悪魔の演技なんぞ、オタクにゃ似合わないぜ。