Mad Love
※流血・無理矢理描写有り※ 一部ビービビ×ベーべべ要素含みます
ああ、駄目だこれは狂ってる狂ってる狂ってる……!
「バッカ……や、めろ……!」
狂ってる。コイツは、狂っている。
首筋に鈍く光るメスを当てられながら、そう思った。
でも、そう思われている本人は一切気づいていないんだろう。
『今』のコイツはそれを正常だと信じている。
「何で止めなきゃならないんでちゅかぁ?ボクはただべーベベを手術したいだけでちゅよぉ?
あ、もしかちて不安なんでしゅかぁ?だぁーいじょーぉぶ……。傷は残らない様にしてあげまちゅから……」
お前の手に掛かると傷がどころか原形が残ってねーだろーが、そう言いたい気持ちをぐっと堪える。
その言葉を言ったが最後。次の瞬間には分からないほどグチャグチャになった自分を想像出来るからだ。
……想像できちまう自分が嫌だが。コイツに慣れてしまったという事だろうか。
「白狂……」
やめてくれ、そう言おうと口を開きかけたその時、
「この前、お兄しゃんが来てまちたよね……?」
「……!!!」
その言葉を聞いた途端、脳味噌も、舌も上手く回らなくなる。
何故、何でお前がそれを知っている?
力を込められた所為で、首筋から血が流れた嫌な感触が伝わってくる。
「……びゃ、…きょ……」
「ベーベベはお兄しゃんの下で随分気持ち良さそーに善がってまちたねぇ?血族同士って感じ易いんでしゅかねぇ? ……そーいえばベーベベは何時の間にあんなに淫乱になったんでしゅか? あんなに早く濡らして……ねぇ? 欲しくてしょうがないからでちゅか?何でもやってまちたねぇ……自分から――」
「い…嫌……や…めろ……!!!!」
思い出させるな、思い出したくない。
早く、少しでも早く忘れてしまいたいんだから。
「どーして、あんな事したんでしゅか?」
「したくてした訳……ねぇだろ……!!」
したくてした訳なんかじゃ勿論、無い。
でも、兄貴絶対主義である俺には断る理由なんて、無かった。
「それでも、した事に変わりないでしゅ……」
ドスッ、と迷いのない音がした。
「ヒッ………」
俺の顔のすぐ横にメスが突き刺さる。
「それを見てボクがどう思ったか分かってまちゅか? ベーベベ」
何時もよりも濃い、殺気。
そして何時もと違い、狂った笑顔に浮かぶ怒りと……哀しみ。
「ボクの……ボクのモノだと思ってたのに……!」
狂った悲しい、心からの、声が脳を支配する。
聞きたくなくて耳を塞ぎたいけれども、腕はピクリとも動かない。
「ずっと……ボクの……!!!」
狂った?悲しい?きっとそんな声の筈だ。
分かっている、分かっている筈なのに、聞いているうちに分かっていたものが分からなくなっていく。
――ガシュッ、とメスをが抜かれ、
――ギシャッ、とまた、突き刺すしている。
――メキャッ、と音がするくらい深く、深く突き刺して、
――バキッ、といったかと思うと、耐え切れず二つになっていた。
白狂は二つになったそれを冷めた目で見つめ、後ろへとほおり投げる。
弧を描いたそれが落ちたであろう音は、俺の耳には届かなかった。
「―――――だから、決めまちた」
異常だと、おかしいと思う。
けれど頭のどこかで、これが正常だと言う声がする。
「ずーっと一緒に居たいから」
その声は自分なのだろうか?もうよく分からない。
「ボクだけを見てくれるよーに」
俺は、もう、
「ボク以外に笑うことも、泣くこともないよーに」
誰か達の所為で
「ちゃーんと、愛してあげましゅからね?」
一体何が『狂っている』かなんて、もうとっくに判別できないのかもしれない。