白黒的絡繰機譚

Can't Eat

「……そうかい、にいちゃん。なら好きにしな」
「勿論そうさせてもらうさ!!不壊なんか居なくたって大丈夫なんだからな!」






現在位置、誰もいない公園に設置されたベンチ。

「……」

喧嘩の原因って何だったけ?
ほんの一時間くらい前の事なのに少しも思い出せない。
きっと凄くくだらない事だったんだろうな……。

「ヒマだなー……」

日は当たって影はできてるけど、そこから不壊が出てきてくれる事はない。当たり前か。
不壊……まだ絶対怒ってるんだろうな……。
『居なくたって大丈夫なんだからな!』とか言っちゃったし……。
ボーっと空を見上げてみたり、辺りを見回したりするけど何か……何か、足りない。

「……」

喧嘩なんか、するんじゃなかった。
あんなこと、言わなきゃ良かった。
すぐに『ゴメン』って言えば良かった。

「……不壊……」

唇だけで『淋しい』って言ってみる。
不壊の前では、言いたくないから。言いたいけど、きっと言えないから。

「……へぇ、淋しかったのかい?にいちゃん」

暗くなった頭の上から降ってくる声。見上げると、そこには勿論、いる。

「……不壊?」

――言わなきゃ、ちゃんと。言いたくない、と俺のどこかが意地を張るけど、それでも。

「不壊……あの」

言える。だから頑張れ、俺。

「さっきはごめ……っ!!?」

塞がれる口。

「……ん、んぅ」

口をこじ開けて入ってくる舌。
ピチャピチャ音がするのが、すっごく……恥ずかしい。
でも、とっても気持ち良くて。

「……っふ……ぁふ……ぇ……」

不壊が離れたときには俺はもう自分で立てなくて、不壊に抱きかかえられて、肩に頭を預けるのが精一杯で。

「何時も何時も……、にいちゃんは可愛い事してくれるねぇ」
「……? ふえ、おこって……ないの?」

俺がそう聞くと、不壊は俺のほっぺたに軽くキスして言うんだ。

「怒りを通り越して愛情になる位、にいちゃんが好きなんだよ」

やっぱり原因なんて思い出せないし、まだ謝れても無いけど。仲直りできたから……それで良いんだと思う。
でもさ、これだけは言わして。

「……俺だって同じ位不壊が好きだよ」

だから、さっきはごめんな不壊。