特別ひとつ、くださいな
何となく、最近自分がナイガシロにされてる気がして、言っちゃった。「俺をオマエの特別にするんだ!」
……なんてさ。
「いいですよ」
「い、いいのかよ」
色々考えてたのに、あっさり返事されて、なんかヒョーシ抜け。手品師のくせに、エンシュツがあっさりだ。
「ええ、いいですよ」
こんなあっさり返事してくるってことは、きっと俺の言いたいこと分かってないんだと思うケド。
でもでも、言われて悪い気はしない。
「ホントに?」
「こんな性質の悪い嘘吐きませんよ。大体、私が貴方に嘘吐いたこと無いでしょう」
どっちかって言うと、タチ悪いのはオマエの察しの悪さなんですケド。分かってるんだけ分かってなんだか、ポーカーフェイスっていうか、そもそも目しか分かんないし。
「嘘吐け!この前、約束すっぽかしただろーが!」
忘れてないんだからな。
……寂しかったんだからな。
「……そうでしたっけ?」
そうだっつの! なんだよなんだよ……。
ホントにホントに、いいんだよな? そうなんだよな?
「……ホントなんだよな?なんか信用できないんですケド」
不安になっちゃうだろ。
本当に約束してくれるワケ?
「疑い深いですね……クラウン、良いですか」
「知ってるとは思いますけれど、私は手品以外が結構どうでも良いんですよ」
知ってるよ。
俺を忘れるくらいに、ってコト知ってる。知りたくなんて、なかったんだケド。
「で、そんな私がですね、自分でも驚くくらい貴方に気をかけているんです」
どういうイミで?
俺だってコドモじゃないから、俺と同じじゃないってことくらい、分かってるよ。
……分かってるケド、
「それが特別以外の何と言うんでしょうね。そう思いませんか?」
……ここまで言われたら、やっぱり悪い気はしないんだよな。タンジュン? そうじゃない。
「……で、俺と手品ならどっちがトクベツな訳?」
「それは決めれませんよ。そもそも土俵が違います。少なくとも、人やロボットの中では貴方が一番特別ですよ?」
「……なら、まぁ、いい」
元から特別になっとけばきっと、もっと特別になるのは簡単だよな?
だから、今日はこれくらいにしといてやるよ。
……あ、でも、
「今から、この前のウメアワセをしてもらうからな!」
「今からですか?」
「当たり前だろ!」
キスしろとか、抱きしめろとか言ってるわけじゃないし、これくらいは別にイイだろ?
だって俺はトクベツなんだからな!