白黒的絡繰機譚

おやつのじかん

「何それ」

俺が聞くと、ロックは指さしながら教えてくれた。ロックは色々なことを知ってる。

「これ? クッキーと、チョコと、ビスケットだよ」
「……?」

どれも聞いたことない言葉ばっかりだ。そもそも、何なんだろう。機械じゃないのはわかるけど。

「クラッシュ……知らないの?」
「うん。知らない。ねぇ、何それ?」

ロックの持つ籠の中の小さな見たことないものたち。
何のためのものなのか、俺には全く見当がつかない。

「んー……説明するより、食べてもらった方が早いかな。クラッシュ、口開けて」

「はーい」

ロックの言う通り、口を開ける。
食べてもらった方が、ってことは、これは食べ物なんだね。

「…………!!」

何だろうコレ、初めて感じる。
ロックから貰ったものは、口の中でじんわり溶けて……ああ、これが『甘い』なんだ。
人工知能の中にはあったんだけど、知らなかった初めての感触。
これが『美味しい』っていうんだ!

「どう? 美味しい?」
「うん! すっごく! 俺、食べ物初めて食べたよ!」
「初めて……?」

あれ、俺おかしなこと言ったかな?
……ああ、そっか、ロックは俺と違う環境だもんね。

「あのね、ロックのとこと違ってウチにはお金がないから、俺たちまでご飯とか食べるわけにいかないんだよね」

人間の食べ物でエネルギーを賄うのはコスト的に無理だからね。ウチは人数もいるしさ。

「そうなんだ……」
「うん。でも、これ……美味しいね。ね、ねぇ、もう少し、食べていい?」

まだ食べてない奴も食べたいし、今貰ったのももっと食べたい。

「うん。元々一緒に食べようと思ってたし……」

そう言ってロックはふわりと笑った。
嬉しいな、ロックは俺の為にこんな美味しいものを用意してくれたんだ。
俺って幸せ者じゃない?

「ロック」
「何? クラッシュ」
「だいすき」

美味しい甘いものもすきだけど、俺を幸せにしてくれる、君が一番だいすき!