戸棚をあけて目当てのものを取り出す
君は、これを気に入ってくれるだろうか








窒息甘味








どうしてそんな事をしたのか、と問われたならば俺には明確な答えを返す事が出来ない
あまり植物以外を気遣ったりする事の出来ない俺だから、上っ面すら取り繕う事も出来ない
ただ漠然と、そうしたい、そうすべきだ……そう思っただけに過ぎない


「プラントマン」


「はいっ!な、何でしょうかホーネットマンさん?」


仕事の休憩時間
小柄な体型通り、俺よりも疲れが目立つ君
何時もそうさせてしまって申し訳ないと思うのだが、君は絶対に俺に疲れを訴える様な事はしない
それ位自分の仕事に責任を持っているということなのだろうが……
もしかして、頼ってもらえないのは俺がそれに値しないからだったりするのだろうか


「甘いものは好きか?」


「はい、好きですけど……?」


外見や性格から想像した通り
だから多分、そうしたいと思ったんだろう


「なら良かった。これを貰ってくれないか」


差し出すのは手の平サイズの小さく透明な瓶
その中身は薄いセロファンで覆われた琥珀色


「え……っ、あの、これ……!」


顔が赤い
オーバーヒートするくらい疲れていたのか……
察してやれなかった自分が情けない


「飴は苦手か?」


「そ、そんな、大好きです……けど、そのっ」


「……迷惑だったか?」


「そそそそんな事ないです!!!すっごい、嬉しいです!!」


けれど、表情にはそんな様子が見られない
気を遣わせてしまっているのだろうか……やはり、俺は情けないロボのようだ


「……すまない」


どろりとした琥珀色を固めて、セロファンで包んで


「ホーネットマンさん……?」


手頃な瓶に詰めて、コルクで蓋をして


「俺は、どうも……この仕事以外の事が何も出来ないらしい。特に気持ちを酌む様な事は特に苦手で……今も、君を困らせている」


何故そんなことをしたのか、今の今まで分からなかった


「そ、そんなこと……!ほ、ホーネットマンさん、ぼ、ボクは!」


理由は単純すぎるほど単純
動力源にこれ以外のものがあるのだろうか?少なくとも、俺は知らない


「……プラントマン?」


真剣な意思を秘めた目と、やはり赤い顔
胸には、瓶が抱きしめられている








「確かに、困って入るんですけど、多分、ホーネットマンさんが想像しているのとは違うんですっ……ボク、分かんないんです。嬉しすぎて、どういう顔をしたらいいのか、全然」








「…………」


『嬉しすぎて』

予想外な、その言葉
……ああ、そういう、事、か


「プラントマン」


「は、はいっ」








「俺も今、分からないよ。君の言葉が、嬉しすぎて、何も」