恋に落ちる音がした
「どうしたの?」ホント俺、どうしたんだろうな……?
相手は男、勿論俺もれっきとした男。それは間違いない事実。
なのにこんなにドキドキしてる。
ありえないだろ、昨日まではこんなことなかったんだぜ?
「どうしたの、ソニック。もしかして熱でもあるの?」
「い、いや。だ、大丈夫だ……。多分……」
ホント多分。確証ゼロどころかマイナスの勢い?
つまり全然、大丈夫じゃないのかも。
だって普通のことじゃないか。向かい合って食堂で飯食ってるなんて、当たり前のシチュエーションで、ホント。
「それにしては随分……」
覗き込むように顔が近付いてくる。
ああ!近い! 近すぎる!!
いや別にこういう距離になるの初めてってわけでもないんだけど! そもそも男同士だろ?! なのに、なのに、だ!
「顔が赤いけど?」
お互いの息が感じられるほど、近すぎる距離。視界は全て、パナの顔が占めている。
なんかもうパニクりすぎて顔がまともに見られない。
「ち、ちち近い……!か、かお、顔が……!」
「あ、ゴメン。ソニックが心配で……。つい」
つい……ついって何!? その笑顔の意味が俺は今全然わかんない!
もしかして、もしかしちゃうの?
そうなったら俺……あわわわわわ……!!
「パ、パナっ!!」
この際だ、言ってしまえ、俺。
くよくよ悩んだり、隠し続けるのは性に合わないんだし。
もしもを両方考えて考えて、でも結局結論なんて変わんないんだから。
「何? ソニック」
だって昨日、聞こえたんだ。
俺を一日で変えた音があの時、確かにこの耳にしっかりと。
「お、俺は……――」
多分、確証はないけど、きっとこの言葉はお前に届くって信じてる。
音が聞こえたのはきっと、俺だけじゃないから。
――昨日、何時もと一切変わらない日常の中で、音がした。
心臓の、全てを飲み込むほどの音に今は呑み込まれてしまったけど、確かに聞こえた音があったんだ。
今迄に聞いたこともないような、澄んだ音。
――恋に落ちた音が、確かに、したんだ。