機械は恋愛感情を理解するか
最初は、どうでもよかった。ただ自分とは合わないだろう、そう思っただけだった。
そのうちに多少性格にイラつくこともあったけれど、同僚としてうまくやれるようになっていった。
……それだけだったのに、何故か気づいてしまった。
気づいてしまったから、普通に前を向いているだけでは合わない視線が気に食わなくなっていくのが分かった。
その合理的すぎて人間味にかけた考え方を変えてみたいなんて思う様になった。
戦闘データを溜めこんだその眼に俺を映してほしいと言いたくなった。
――同僚、なんて間柄じゃ満足できなくなった。
(絶対に、気づかれるわけにはいかないけど)
きっと、知られたところで俺に対する態度は変わらないだろう。そういう奴だと知っている。
……でも、変わらないからこそ怖い。
だから、知られたくない。
「……なぁ」
ふとした日常の隙間だった。思いもかけず二人きりになる機会があるなんて、思いもしなかった。
だから何があるわけでもないけれど、なんとなく必要最低限しか話さないアンタに声をかけたんだ。
「何だ」
返事をして俺を見たその目は両方とも人間にしては、無表情すぎる。
「……何でもない」
その目に、その視線に一瞬怯んだ俺は、何も言えなかった。元々、何か話題があった訳でもなかったけど。
「……」
会話はそのあと、一言もなく、ただ俺だけが痛々しい時間だけが流れていた。
――マルハーゲ帝国の四天王、しかも最強の男とされるハレクラニ様に仕え、しかもヘル・キラーズの一人として恐れられている俺なのに、
(この……感情の所為だろうか。少し前までは気にしなかったのに)
あの目が怖いと、心から思った。
本当に自分と同じ、血の通う人間だろうかと疑いたくなった。
殺気を向けられたわけでもないのに、ただ、怖いと思った。
無表情すぎたあの目が、ひたすらに。
そして、――怖いと思いつつ、嫌いになれない自分に吐き気がした。
(こんな事、なんて)
気づきたくなかった。
アンタが人間だろうと機械だろうと絶対理解してもらえない、この感情なんて!