耳に聞きなれない音が飛び込んできた








ラストチャンス








音の正体は至って普通

『少年が発した声』

ただし問題はそこじゃない
その内容が一番問題なんだ


「……悪いが、もう一度言ってもらえるか……?」


そう言うと、俺の目の前の少年は何とも言えない表情になる


「あ、いや、その、な?なんというか……俺は、その……」


「先に言ったのはフラッシュでしょう?」


つまり、少年の発した声はそれの返事だという事なんだろう
けれども……俺、何か言っただろうか?
慌ててメモリーを探ると、それはすぐに見つかった


「俺、こんなこと言ったのか……!?」


信じられない、信じたくない、信じられる訳が無い
けれど改竄の無い記憶は、紛れもない真実


「……フラッシュ?」


覗きこんでくる少年
その顔に浮かぶは不安
原因は、とてもとても不甲斐ない俺


……別に、そんな顔が見たい訳じゃないんだ
俺は、何でも良いからお前がお前らしくしているのを見れていればそれで良かった
だから、あんな事を言うつもりは、これっぽっちも無かったんだ


「ロック、マン」


でも、言ってしまったのは事実
ならば、ここはもう腹を括るしか、ない


「…………」


名前を呼んでも、お前は反応しない
伏せられてしまった顔は俺に向けられる事は無い
けれど、そうさせてしまったのは他でもない俺自身


「俺は……さっきのアレを、ずっと言わないでおこうと思っていた」


きっと、拒否されると思っていた
それが恐ろしくて、言えなかった


「でも……言ってしまったからには、あんな事、無しには出来ないよな」


言ってしまったからには、無しにすることも、誤魔化す事も俺には出来ない
かといって逃げ出せもしない
逃げ出すなんて、出来る訳が無い!


「だから、もう一度……今度はちゃんと言わせて欲しい」


今度こそ、自分の意思で、お前に伝えよう
さっき言った事と、同じ台詞
俺が一番……言いたくて言えていなかった台詞を








「お前が、好きだ」








伏せられていた顔が俺に向けられる
その顔は、








「僕もだよ、フラッシュマン」








今までで一番の、笑顔だった