白黒的絡繰機譚

いいえ、計算です

「うわぁっ」

刹那に思う。
ああああ、もしかしてもしかして、これって……わざと、ですか?

「……ぱ、パナ、だ、大丈夫……か?」
「う、うん。ソニックこそ、大丈夫?」

正直に言えば、大丈夫じゃないです。
もう何て言うか、色々な意味で駄目です。……主に、理性的な意味で。
だって、今、俺の下にはパナがいて。
パナの下には床があって。つまりは、そういう事なんですよ。
……って俺、誰に説明してんだ誰に。
多分自分になんだろうけど……。だって、今一番この状況を分かってて分かってないのは誰でもない俺なんだから。
……ああー……。余計分からなくなってきた。

「ソニック? 本当に大丈夫?」

大丈夫かな、怪我的には大丈夫なんだけど……。それ以外が色々とヤバいです。
勿論、それが何か、なんて言わないけどさ。

「あ、ああ! 勿論!!」
「そう? 良かった……」

うん、良かった。
良かったと思う……んだけどさ……。

「あのさ……パナ」
「何?」

……多分さ、俺はパナの掌の上で踊ってるんだとは思う。
そうやって柔らかく笑って、俺を誘導して、困らせて、掌からはみ出ない様にしてるんだろう。
俺だって、その自覚位ある。
……あってどうするんだよ、って感じだけど。

「う、腕が」
「腕が?」
「……腕が、俺の首に回ってるのは何故ですか」

腕が首に回ってるのも、にっこり笑っているのも、もしかしたら俺の下にいるのも、全部。
全部、きっとパナの思い通りに違いない。
普通だったら、そこまでやりたい放題されたら怒ったりするのかもしれない。
でも、俺にはそんな気は全然起きなくて、寧ろそれでも良いのかもなぁ、とか考えたりしてる。
俺っておかしいのかな?

「それってさぁ、わざわざ聞くトコ?」

ツン、と唇を尖らせて、少しだけトーンを落とした声。
それはきっと多分、機嫌を損ねた……フリ。
俺だって、パナの事分かってるよ。
でも、どうしてもテンパって、余裕なんか作れない。
だから今の状況も分かってる筈なのに分からなくなっちゃって、ぐっだぐだ。

「ご、ゴメン」
「謝る事でも無いと思うけど?」

ぐるぐる、俺の頭はフル回転を始める。
きっと、多分、つまりは、そういう事なんだと思う。
行動に移したらきっと、パナは笑ってくれる。
だから、さっきからずっとではあるんだけど、五月蝿い心臓を鎮めて――。

「パナ」

――キスを、しよう。